第2回 抜くか入れるか
音程(ピッチ)が合わないのでとりあえずチューニング管(主管)をいじる。でもどうしたらいいのかわからないので結局ほとんど動かさずにまた吹き始める。…中高生によく見かける光景です。今回は管を抜くとどうなるのか?どのくらい抜いたらいいの?ということを考えてみたいと思います。
1. なぜ長いと低い?
Bbクラリネットよりバスクラリネットの音が低いのは管が長いからです。その差は約2倍です。管が長くなると音は低くなるのです。この性質を利用して音程を矯正しようというのがチューニングです。
なぜ管が長くなると音は低くなるのでしょうか?音はその音量や音程、音色にかかわらず25°Cの空気中だとだいたい347m進みます。1Hzの音(人の耳には聴こえない)は347m進むうちに1回振動します。2Hzの音(1Hzの1オクターブ上の音)は2回振動します。その違いは振動1回あたりに進む距離です。この振動1回あたりの進む距離が高い音は小さく低い音は大きくなります。管が短いと振動できる距離が短いので音が高くなります。逆に管が長いと音は低くなります(この場合は高い音もならせます)。ざっくり言えばこれが管の長さと音程の関係です。
2. チューナーとにらめっこ
さて、肝心なのは実際の演奏で音程を合わせることです。チューニングの際にはチューナーを使う人が多いと思いますがどのくらい基準とズレたらチューニング管を抜き差ししますか?針式チューナーのメーターは真ん中が基準の音程を示し、その左右に100セントづつメモリがあり針が振れるとその分音程がズレていることを示します。セントとは平均律においての半音の1/100を1セントとした音程の単位です。高い音でも低い音でも半音を1/100にするので1セント大きさ(?)はマチマチですが音程のズレ具合はこれで判断します。
3. どのくらいズレたら?
管が抜き差しできる最小単位は1mmぐらいでしょうか。トランペットのチューニング管を1mm抜くと真ん中のBbの音はどのくらい変化するかを考えてみましょう。Bbの音をAの音にするにはおよそ5cm抜く必要があります。なので1mm抜くと変化する音程は100セント/50mm=2セントぐらいです。つまり2セント修正したい場合は1mm管を抜き差しすればいいわけです。10セントだと5mmほど、20セントだと10mmほどです。
トロンボーンだとどうでしょうか。トロンボーンの真ん中のBbの音はトランペットのそれより1オクターブ低い音になります。すると抜き差しした時の変化の量が倍になります。BbからAに半音低くするにはおよそ9cm抜く必要があります(第1ポジションー第2ポジションの距離)。1mmあたり1.1セントです。10セントは9mmほど、20セントは18mmほどです。
3. 音域によって
音域が低くなると1セントあたりの管の長さが長くなり、音域が高くなると短くなります。ピッコロだと1セントを管の抜き差しで調節することは難しいのです。逆にテューバだと1mm抜き差ししてもあまり違いがありません。自分の楽器がどのくらい抜き差しするとどのくらい音程が変わるのかを知っておくことは大事なことです。
4. ただし!
音域によって1セントあたりの管の長さが違うということはどれか一つの音を正しくした場合に他の音がズレると感じる人もいるかもしれません。高音域を合わせたら低音域が悪くなったとか…。しかしこれは言いがかりです。これまでは一つの音についての話でした。これはつまり1つの管についてということです。管楽器は1本の管でできているのでこの長さをチューニングするのです。1つの管においてはある音の1オクターブ上の音は正確に1オクターブ上の音がなるようになっているのでチューニング管(主管)によるチューニングではどの音域も同じように変化します。もしオクターブの音程が違うとしたらそれは下の音と上の音で違う吹き方をしているからです。高い音はきついので力がゆるんでしまったり必要な空気のスピードが足りなかったり…(この話はまたの機会に)。キーやバルブの音程はメーカーやモデルによって違うので音程の悪い楽器はそれを奏法で修正しながら演奏するしかありません。倍音列による音程差も自力で修正します。
参考
- わかりやすい高校物理の部屋(http://wakariyasui.sakura.ne.jp)
吹奏楽の楽譜 | |
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NHK大河ドラマ「西郷どん」メインテーマ | |
NNSB-013 Girls - フルスコア&パート譜 |
吹奏楽の本 | |
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必ず役立つ 吹奏楽ハンドブック | |
「行動四原則」で強くなる吹奏楽 | |
おもしろ吹奏楽事典 |